2009年9月11日金曜日

聖書時代のカップに謎の文字

引用

それは一見したところ、ただの壊れた泥まみれの石製のカップにしか見えなかった。しかし、発掘チームが洗浄作業を進めると、表面に10列の謎の文字列が刻みこまれていることが判明した。このカップは2000年前のもので、イスラエルの首都エルサレムで発見された。
発掘チームのリーダーでノースカロライナ大学チャペルヒル校のシモン・ギブソン氏は次のように話す。「石のカップ自体は当時のユダヤ人家庭ならどこにでもあるありふれたものだ。しかし、石のカップに文字が刻まれているのは初めて見た」。
この文字列を解読できれば、イエス・キリスト時代のエルサレムの日常生活や宗教儀式を解明する手掛かりが得られると考えられる。
発掘チームは2009年夏、ダビデ王墓や「最後の晩餐(ばんさん)」で歴史的に有名なエルサレム旧市街のシオン山の調査を続けていた。そして、宗教儀式に関連する小さなため池のそばで問題のカップを発見した。発掘現場は当時の上流階級の居住区域で、近くにはヘロデ大王の宮殿があった。ヘロデ大王はキリスト生誕の直前にイスラエルを統治していた人物である。
「周囲の遺跡や出土品から判断すると、このカップの作成年代は紀元前37年から紀元70年の間と考えられる。紀元70年代にはユダヤ人の反乱に対抗してローマ人がエルサレムを壊滅状態に追い込むが、それ以降のものとは考えられない」とギブソン氏は話す。
今回の発掘ではほかにも、ソロモン王がエルサレム神殿を築いた紀元前970年ごろから、第1回十字軍によりエルサレムが破壊された紀元1099年まで、さまざまな年代の遺跡が発見されている。
刻まれた文字列がなければ、今回のカップは決して異例な出土品ではないという。3つの破片に割れており、状態が良かったわけでもない。このような石のカップは当時のユダヤ人の間に広く普及していた。これには不浄のものを避けるという宗教上の原則が大きく関係している。
現在でもユダヤ教徒の中に「カシュルート」と呼ばれる厳格な食事規定を守る人がいるように、キリスト時代のユダヤ人も食事と飲み物に関して複雑な掟(おきて)に従っていた。言い伝えによると、陶器製のカップの場合、禁じられた食物に触れてけがれると破壊するか廃棄する必要があったという。
「しかし石は宗教上、不浄にならないとユダヤ人の掟では定められている」と、同じくノースカロライナ大学チャペルヒル校の考古学者ジョディ・マグネス氏は話す。同氏は聖書時代のエルサレムの日常生活を専門としている。
「長期的にみれば、不浄を避ける原則を守ろうとすると、石のカップを使うのが経済的だ」。特にエルサレムでは石の方が経済的だった。この地域ではどこを掘っても軟らかい白亜質の岩石が産出するので、簡単に加工して石のカップを生産することができた。エルサレムはその中心地だったのである。
手彫りで成形しただけの粗野な石のカップは現代のビールジョッキに似ているが、その用途に関して研究者の意見は割れている。理由の一つとして、飲み物が飲みにくいという点がある。発掘チームのリーダーのギブソン氏は、「個人的には、食事の前に手を清める儀式に使っていたものだと考えている」と話す。
さて、今回発見されたカップを特別な存在にしているのは、表面に刻まれた文字列である。深く刻み込まれた溝はいまでもはっきりと識別可能だが、現在のところ何が書いてあるのかは解読できていない。
意図的に謎めいた書き方がなされていた死海文書と同じように、このカップの文字列もどうやらある種の暗号のようだ。当時のエルサレムで使われていた2つの書き言葉であるヘブライ語とアラム語を混ぜ合わせて書かれている。「刻まれた文字列は意図的に読めないように書かれている」とギブソン氏は話す。
同氏の発掘チームは、文字列の解読に向けて、この時代の文字を専門とする世界中の研究者に対してカップの写真を送付した。 また、カップや文字列の詳細な写真をオンラインで公開する準備も進めているという。
ギブソン氏は次のように話す。「文字列を刻んだのがどのような人物なのかはわからないが、その人物には何か胸に秘めた思いがあり、とにかく誰にも知られたくなかった。それは間違いない。書かれた内容はカップの使い方に関する儀式手順かもしれないし、まじないや呪いの言葉かもしれない。いずれにせよ買い物リストといった世俗の事柄ではないことは確かだ」。

 

何だか古代のロマンという感じの記事ですね。

でも、試しに私が暗号めいたものを書いて埋めておいたら、何万年か先には同じように掘り起こされて「暗号だ!」と言われたりするのでしょうか?(笑)